I'll Lead You Home (第15話)

エピローグ

パリス中尉に通常任務への復帰が許されたのは、医療室で退屈な一週間を過ごした後のことだった。
その朝、意気揚々とブリッジに向かうパリスを、通路でベイタードが呼び止める。
「ご回復おめでとうございます、中尉!」
「ありがとうベイタード。だけど何で敬語なんだ? 僕がいない間に、君も中尉に昇進したんだろ?」
「それが…、先ほど作戦室へ伺って、降格を願い出たところ許可されたんです。本日付けで、少尉に逆戻りです。」
「何を願い出たって? 中尉。」
「もう中尉じゃありませんってば。」
「…どういうことなんだ?」
「ヴォイジャーの主任パイロットはあなたです、パリス中尉。僕はファーストチョイスじゃない。後がまに過ぎません。それを厭ってほど思い知りましたよ。だから僕も、いつかアルファ宙域に戻れたら、その時こそファーストチョイスでパイロットに抜擢される実力を養おうって決めたんです。僕に目標を示して下さって感謝します。それじゃ中尉、またあとで。」
そう言ってベイタード少尉は角を曲がり、トム・パリスだけが誰もいない通路に残された。
俺だってファーストチョイスじゃなかったのに、ベイタードの奴忘れてやがる。これだから勘違いしちまうんだよな。
パリスは独りごちた。それにしても、自分にはとても、彼のように潔くは振舞えないだろう。それはパイロットとしての実力以前の問題だ。そしてまた、パリスは自分のために身を投げ出した友人たちのことを考えた。今の自分にとてもそれだけの価値があるとは思えなかったが、それでもパリスは、腹の底に温かいエネルギーが満ちて来るのを感じる。
この通路の先に、僕の信じる未来がある。
パリスは突き当たりにあるターボリフトに乗り込み、「ブリッジ」と告げた。

‐終わり‐